セツローさんの家
陶芸家の小野哲平さんとちくちく縫い物をされる早川ゆみさんとは、私が高知に移住をした頃からの友達でした。
そのお二人が、いつのまにか哲平さんのお父さんのセツローさんと一緒に暮らすことを決め、家を建てる計画を立てていました。
お二人は、ものづくりにより生計を立てられています。家についても一つのものづくりと言えると思うのですが、大きすぎて考え方がいつもされていることと重ならなかったようでした。
設計士の方との三者は、うまく噛み合わないまま時間が過ぎてしまったようです。
ある日偶然、ゆみさんと会った時に、彼女は、こう言いました
『あぁー、芝さんも設計士さんだったぁ!』
ホントにもう!私はこれでも設計士の端くれなんですが、私の存在をすっかり忘れていたのです。
私は、内心もうこういうのやりにくいし、どうしよう、だいたい、二人がちゃんと要望を持たずにいるから悪い。相手が変わっても一緒じゃないの?
と拗ねた気持ちもあって、動きがとれませんでした。
しぶしぶ、やれることだけはさせていただきましょう、という低めのテンションで挑むことになってしまいました。
哲平さんの母屋もアトリエも近所にお住いの田中さんという大工さんが建てられていました。近隣の石垣、棚田の風景に溶け込む、建材を使わない、漆喰、杉・桧・日本瓦のシンプルな構造のお家です。お風呂と長男の象平君の部屋は、別棟で建ってますそれが、木製デッキでお互いが孤立することなく連なっています。対岸の道向こうからの眺めは、小さな王国のようです。
母屋とセツローさんの家はデッキでつなぎましょう。
3人の意見は一致しました。そしてお二人は、気が腐る事をおまり恐れていませんので広く二つの建物をつなぐことで楽しく暮らせそうというイメージで気持ちが迅りました。